心臓大血管救急におけるICTを用いた革新的医療情報連携方法の普及と広域救命救急医療体制確立に資する研究

研究成果

Medical dissertation

医師不足地域の心筋梗塞診療体制への1つのヒント

論文著者:熊本大学 循環器内科 石井正将 先生

論文の概要

熊本大学の石井正将(まさのぶ)特任助教、辻田賢一教授らは、厚労科研「心臓大血管救急におけるICTを用いた革新的医療情報連携方法の普及と広域救命救急医療体制確立に資する研究(班長:旭川医科大学 東信良教授)」の取り組みの一つとして、病院密度、病院あたりの循環器専門医数と急性心筋梗塞の院内予後との関連を検討しました。

急性心筋梗塞の中でも心原性ショックを合併した重症の心筋梗塞は死亡率が極めて高い疾患です。近隣に多くの病院があり、それぞれの病院にたくさんの専門医がいれば救命率は高くなりますが、医療資源が乏しい地域では病院を増やし、すべての病院に多くの専門医を配置することは困難です。このことが医師不足地域の大きな医療課題であり解決法が模索されています。

そこで、石井特任助教、辻田教授らが、CVIT(日本心血管インターベンション治療学会)とJROAD(循環器疾患診療実態調査)の共同研究として、JROAD-DPCデータベースの解析を行ったところ、病院密度の低い地域、すなわち周囲に病院が少なく病院へのアクセスが容易ではない地域であっても、その病院の専門医数の多さは急性心筋梗塞の院内死亡の低下と関連していました。この結果から、医師不足地域にあっても、限られた医療資源を集約し、配置を最適化することで急性心筋梗塞の救命率を向上させる可能性が示唆されました。