心臓大血管救急におけるICTを用いた革新的医療情報連携方法の普及と広域救命救急医療体制確立に資する研究

ご挨拶

Greeting

Nobuyoshi Azuma
M.D.,Ph.D.Professor

旭川医科大学
血管・呼吸・腫瘍病態外科学分野
教授 東 信良 

Nobuyoshi Azuma
M.D.,Ph.D.Professor

旭川医科大学
血管・呼吸・腫瘍病態外科学分野
教授 東 信良 

「心臓大血管救急におけるICTを用いた革新的医療情報連携方法の普及と広域救命救急医療体制確立に資する研究」班の班長を務めております東 信良と申します。当研究班の研究目的と研究内容について、ご紹介させていただきます。

 緊急を要する循環器疾患の治療成績は治療技術の向上や医療機器の進歩などによって著しい進歩を遂げており、また、救急医療現場で働く医療者の努力により救命率も向上してまいりました。しかしながら、特に緊急度が高く、かつ、治療難易度が高い急性大動脈解離や大動脈瘤破裂といった大動脈緊急症は未だに致死率が高く、診療体制改善の余地があると考えられます。急性心筋梗塞に対する急性期治療はカテーテル治療の普及により良好な治療成績を達成している地域が多い状況でありますが、病院密度の低い地域においては重症例の救命率に改善の余地があると考えられております。

 そうした中、2019年12月に「脳卒中、心臓病その他の循環器病に係る対策に関する基本法」が施行され、循環器病対策推進基本計画が2020年10月に発表されました。その基本計画の大きな柱のひとつに「救急搬送体制の整備」および「救急医療の確保をはじめとした循環器病に係る医療提供体制の構築」が掲げられました。

 本研究は、心臓大血管救急疾患の治療や医療体制の実態を把握し、病院間情報連携やネットワーク構築によって、救命率向上に有効な科学的根拠を提案することを目的として出発し、上述した循環器病対策基本計画を推進する一助となることを目指すものであります。

 大動脈緊急症や重症度の高い冠動脈救急疾患治療において、その難易度の高さや周術期管理の複雑さから、治療可能な医療機関は限られておりますので、患者さんをいかに迅速にその限られた医療機関であるセンター病院に搬送するかが救命率向上の焦点となります。救急搬送段階や初期治療病院における迅速かつ的確な診断、適切な搬送先の選定、そして病状に関する医療者間・医療機関間の情報連携が鍵を握っていると考えております。その情報連携改革のために、いかに有効に先端情報技術を使うかについて、本研究において注力しているところでございます。

 急性心筋梗塞は国民によく知られている循環器救急の代表的疾患ですが、急性大動脈解離や大動脈瘤破裂はあまり知られていないように思います。大動脈緊急症は急性心筋梗塞の約1/3程度発症していると推定されており、決して珍しくない疾患群であるとともに、その致死率の高さから非常に重要な循環器救急疾患でありますので、このホームページでは、大動脈緊急症に関する論文や学会、講演会などの情報も発信して、少しでも啓発に役立てるよう努めてまいります。

 本ホームページが、大動脈緊急症をはじめとする循環器救急疾患治療について、皆様への有益な情報提供となりますことを切に願っております。